マンガ家の収入　「原稿料」と「著作権(使用料)」

これまでは

①新規の作品制作による原稿料
②過去の作品から得られる印税

の2つからなっていましたが、
ウェブトゥーンの登場に伴い、変化が生じているので、

ストーリー漫画制作（個人制作《アシスタント含む》）と、ウェブトゥーン制作（チーム制作）の
収入と著作権の違いについて、こちらにまとめておきます。

（会社的な文脈で言うと、出版社系がストーリー漫画制作スタイルで、ゲーム系の会社がウェブトゥーンスタイルという大まかな違いがあります）

◆ストーリー漫画（個人制作）の場合、著者の収入は

①「原稿料」：雑誌掲載の場合のように1回限りの支払いになるものの事。
執筆のために時間や労力を割いたという労働への対価。
※原稿の依頼者が著作物を転用した場合には、執筆者に新たに原稿料・再使用料を支払う必要があります。

②「印税＝著作権使用料」：著作権は著者が有し、出版社等に著作権という包括的な権利に含まれる権利の一つである出版権の権利を使用することを許可して得られる対価。
要は「著作者が、両者納得のうえで出版社に権利＝出版権を与え、それに出版社が支払う対価」です。
（印税は一般的には出版社と著作者との両者間での任意の取り決めで決まりますが商慣習で『7～10％（〝販売価格〟に対して）』が主流となっています）
著作物を複製して販売等する出版社が発行部数に応じて、著作権者に著作権使用料として印税を支払います。つまり、発行部数が多ければ多いほど、印税＝著作権使用料も多くもらえます。

◆ウェブトゥーン制作の場合は、原作、シナリオ、ネーム、線画、着色と各工程が分業制なのが一般的です。

①「制作費（原稿料）」：制作費として1回限りの支払い。ストーリー漫画の場合はすべての工程を著作者が一人で行っても、原稿料はページ単価1万円～2万円台（新人～中堅）という事が多いですが、
ウェブトゥーン制作費は、一工程で、それ以上の制作費が支払われることが多いです。

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一例

株式会社ナンバーナイン社の記事より
原作（プロット）：25,000円〜 50,000円（税別）/ 1話
ネーム制作：50,000円〜 75,000円（税別）/ 1話
線画（キャラクターデザイン）：75,000円〜 125,000円（税別） / 1話
着色：50,000円〜 75,000円（税別） / 1話
アシスタント（背景制作）：25,000円〜 50,000円（税別）/ 1話

※制作メンバーの能力や実績などに応じて原稿料は変動します。
※1話＝70〜80コマ程度の想定です。

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これは、クリエイター側に著作権が発生しない事と関係しています。　
具体的にはウェブトゥーンの制作会社とは
『著作権は発注したクライアントに移行、著作人格権は行使しない』
という契約が多くなり、著作者はクライアントとなります（＝「職務著作物」という扱いになります。これは制作会社がリスクを負っているためです）

そのため印税が支払われるかどうかは制作会社によって異なります

（また印税率も制作会社への〝入金金額〟に対してのパーセンテージとなります）。

※分業制ではないウェブトゥーンスタジオも存在します

※従来の出版社が取り扱うストーリー漫画と同じスタイルで、著作権が作家に残るウェブトゥーンも存在します。

プロのクリエイターとして大切なことは、自分がどういうビジネスモデルの会社と契約を結ぼうとしているのかを、事前に理解しておくことです。

※なお著作権が発生しない場合でも、クライアントに対し
①．「クレジット」として著作者としての名前の記載のお願い
②．ポートフォリオなどで、個人の実績としての使用のお願い
、は伺ってみていいと思います。

〝連載前契約〟は双方にメリットがある

例：１話１８ページで10回契約、原稿料も設定する
10回が終わって、クライアントから続きを依頼されたら改めて再契約する

作家にとってのメリット

少なくとも契約期間中には、理不尽な「連載打ち切り」がないこと。打ち切る場合は、クライアントが違約金を作家に支払わねばならない。
クライアントから続編を所望してくるのなら、原稿料のアップなど、有利な方向で再交渉ができる
シナリオ制作面において展開上の区切りと出来る（発注先の企業から見たら〝商品〟でも、クリエイターから見たら大切な〝作品〟ですので…）

クライアントにとってのメリット

最初の契約期間は「お試し期間」として、お試し価格での原稿料の提示が出来る

双方にとってのメリット

連載を打ち切る宣告という、双方にとってストレスとなるやりとりを、契約期間が最初から設ける事で、軽減する事が可能になる

漫画などのエンターテインメントは生活必需品ではないので、どうしても先の見通しの難しさと隣り合わせにはなってしまいますが、クリエイター自身は誠心誠意、エンターテインメントの制作に心血を注いでいます。
しかしながら現在でも、こういった連載前契約が一般的になっていない故に、「突然連載の終了を告げられる」という事が行われている現状があります。

クリエイターとクライアントの双方にとって、可能な限りでフェアな契約が広がる事を望んでいます。

参考記事

https://togetter.com/li/1130500