契約締結は他業種では当たり前のことですが、漫画業界では悪しき慣習として、当たり前のことが当たり前に行われておりません。契約書の作成は、制作側にとっても、クライアント側にとっても、トラブル防止の為に有効なものです。
下請法により、発注側のクライアントには、委託内容に関する3条書面の交付義務が定められています。
https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukegaiyo/oyagimu.html
なお、契約書の作成というと難しく聞こえるかも知れませんが、基本的には、本来打ち合わせの際に、話し合われるべき内容を書面化した物という認識で大丈夫です。
収入印紙の貼付が必要な場合にはこの場所に貼付してください。
契 約 書
(サンプル)
クリエイ太郎(以下「甲」という。)と編集部(以下「乙」という。)とは、原稿執筆業務の委託に関し、以下のとおり契約を締結する。
第1条 (委託)
乙は、甲に対し、以下の原稿(以下「本著作物」という。)の執筆を委託し、甲はこれを受託した。
(1)タイトル:蟹高専
(2)原稿分量:20p
第2条 (納入)
1 甲は乙に対し、本著作物を以下の形式により、2022年07月01日までに、乙に対して納入する。
・紙原稿
2 乙は、前項の納入を受けた後速やかに納入物を検査し、納入物に瑕疵がある場合や、乙の企画意図に合致しない場合は、その旨甲に通知し、当該通知を受けた甲は、速やかに乙の指示に従った対応をする。
3 納入物の所有権は、対価の完済により乙に移転する。
第3条 (権利の帰属)
本著作物の著作権は甲に帰属する。
第4条 (利用許諾)
甲は乙に対し、本著作物を下記形態で利用することを許諾する。
(1)印刷物への利用
名称:月刊「苦労人」8月号、部数:10,000部
(2)利用にあたっての翻訳の可否:否
(3)その他
その他:__________
第5条 (著作者人格権)
1 乙が本著作物の内容・表現又はその題号に変更を加える場合には、あらかじめ甲の承諾を必要とする。前条において翻訳を可とした場合も同様とする。
2 乙は、本著作物を利用するにあたって、以下のとおり著作者の表示をしなければならない。
・クリエイ太郎
第6条 (保証)
甲は、乙に対し、本著作物が第三者の著作権その他第三者の権利を侵害しないものであることを保証する。
第7条 (対価)
乙は、甲に対し、原稿執筆業務及び本著作物の利用許諾の対価、その他本契約に基づく一切の対価として、金400,000円(消費税込み)を、2022年08月31日までに支払う。
第8条 (その他)
本契約に定めのない利用態様については、甲乙別途協議の上、利用の可否、対価等につき決するものとする。
本契約締結の証として、本契約書2通を作成し、甲乙記名捺印の上、各自1通を保持する。
年 月 日
甲 住所
氏名 印
乙 住所
氏名 印
※費用は掛かりますが、著作権に詳しい行政書士(司法書士)に、契約の場に立ち会ってもらうことも可能です(「契約協議・締結立ち会い」)。
当然、行政書士のクライアントは作家ですから、作家に有利になるよう、話し合ってくれます。
上記の契約書サンプルは、簡易的な内容な為、可能であれば少なくとも、
を事前に取り決めておいた方が無難です。
ウェブサイトへの掲示や、コミックスの販売の際には、別途契約書を取り交わし、対価を頂く形になります。
(これが、作品の利用を独占的にコントロールできる権利=著作権=著作物の利用権です)。
また、著作権を他人に譲渡することもできます。
(上記のサンプル契約書にある「納入物の所有権は、対価の完済により乙に移転する」とありますが、〝所有権は形あるもの(紙原稿)に対する支配権です。漫画原稿データは形がないもの(無体物)なので、所有権の対象にはなりません〟)
また、契約書には、収入印紙を貼る必要があります。収入印紙の税額は、契約金額によって異なります。
また、契約が3か月以内なのか、継続的な契約か等でも税額が変わってくるようです。
詳しくは契約書を作成される方ご自身で、ご確認ください。
また、収入印紙は無くても契約書としての効果はあるそうですが、納税の方で問題があるそうです。
参考
漫画家・佐藤秀峰氏「漫画家と契約の話」
https://note.com/shuho_sato/n/nc58789fc1daf
※上記すべて、法律の専門家ではない筆者が、個人的に調べたものですので、間違いのある可能性があります。このサイトの文章・情報等に基づいて被ったいかなる被害についても、 筆者は一切責任を負いかねます。
参考